「責任ある変革者」を掲げてDXを推進
世界の多くの国とともに日本も2050年までにカーボンニュートラルを実現することを表明し、さまざまな取り組みが進められています。出光興産もエネルギーの安定供給と社会課題の解決に貢献することを自らの責務とし、「2030年ビジョン」に「責任ある変革者」を掲げその実現のためにDXを積極的に進めています。
顧客に対する新たな価値創造の1つに「スマートよろずや」構想があります。サービスステーション(ガソリンスタンド)の「apollostation」を、地域住民の生活を豊かにする新時代のよろずやとして活用するというものです。エネルギー供給だけではなく、移動や地域社会に役立つ拠点として発展させようとしています。これは国や地域社会を大切にする企業理念に合致しており、出光興産らしさが垣間見られます。まずは「食・健康」をテーマに実証実験を重ねながら「三方よし」の仕組みを作ろうとしています。
今後、出光興産は現在の化石燃料を中心とした事業から再生可能エネルギーの割合を高め、さらに次世代モビリティやコミュニティなどの新規ビジネスを創出していこうとしています。
経営ビジョンを実現するためのDX基盤
これまで化石燃料を事業の基盤としてきた出光興産が、エネルギーの安定供給を続けながらも脱炭素化を実現するためには、大きな変革を成し遂げなくてはならないのは想像に難くありません。業務の効率化・高度化はもちろん、事業構造を改革しながら、新たなビジネスモデルを創出するには試行錯誤を繰り返す必要があります。
DXの実体を支えるビジネスプラットフォームは、必要なITリソースを求められたら迅速かつ素早く提供できるよう、より一層の進化が求められています。出光興産ではデータセンターで運用していたIT基盤のクラウドへのリフト&シフトを進め、クラウドは主にMicrosoft Azureを利用しています。
クラウドで稼働する仮想マシン数がまだ少ない時はデータを表計算で管理し、手動で構築をしていましたが、現在は約300台の仮想マシンが稼働しています。2022年度構築する台数は約100台、2023年度は約200台の構築が見積もられています。
Microsoft Azureにはデプロイや管理に使える「Azure Resource Manager(ARM)」があるもののオンプレミス環境と併用できず、より高度なIaCの実現が求められていました。
課題
- 今後、仮想マシン環境構築が大量に控えている
- 効率的かつ素早く、ミスなく作業する必要がある
- オンプレミス環境とクラウド環境を統一的に管理したい
- 将来のコンテナ運用を見越してツールを選定したい
- 環境構築のコード化(IaC)で管理性や再利用性を高めたい
ソリューション
IaCでプロビジョニングを高速化、効率化
出光興産でTerraform Cloudを正式に導入したのは2022年6月。まずは運用ルールや手順の整備から始め、順次構築作業を進めています。社内向けシステム構築案件の推進やインフラ構築を担当している東田氏は「PoCをしてみたら意外と簡単だとわかり、とんとん拍子で導入が進みました。実作業で不明点があればHashiCorpさんにサポートしていただきながら進めています」と言います。例えばスクリプトの記述で不明点があればHashiCorpがサンプルコードを提供したり、GitHubと連携方法をHashiCorpがサポートしたりするなどです。
Terraform Cloudでコード化することで、作業時間は大幅に短縮できました。インフラ構築のPLの後藤氏は「丸一日かかっていた作業がおおよそ半分になりました。手動の時はまれにミスもありましたが、コード化でミスがなくなり、後のトラブルシューティングにも役立ちます」と言います。これまでは依頼が大量に寄せられると日程調整が必要でしたが、東田氏は「今は多数の依頼が来ても安心して受けられます」と言います。
ビジネスの成果
「これまで丸一日かかっていた作業がおおよそ半分になりました。大量の作業依頼が来ても、日程調整することなく安心して受けられます。今後はTerraform Cloudを使い倒していきたいです」
- 環境構築がコード化できて作業時間が約半分に
- 作業ミスがなくなった
- 後日確認できてトラブルシューティングに有効
- コードが再利用できて生産性が向上
今後の効果として無駄なリソースを減らすことも期待されています。後藤氏は「これまで棚卸しをすると放置されたままのリソースが見つかることがありました。Terraform Cloudだとデプロイ単位で関連するリソースをまとめて削除できるので、不要なリソースが残ることが減る環境になると思います」、東田氏は「今後はTerraform Cloudを使い倒して、環境の高度化につなげていきたいです」と話しています。
最後に後藤氏は将来展望として次のように語っています。「2030年ビジョンを成し遂げる上で、ステークホルダーの皆様が安心できる事業を、スピード感を持って創造することが必須であり、これを実現するために、ビジネスプラットフォーム基盤が必要です。自らが、新しい技術に精通し、活用することで、ビジネス変革・創造に資するビジネスプラットフォーム基盤を提供し続けたいと考えています」
まとめ
出光興産はITインフラ環境をオンプレミスからクラウド(Microsoft Azure)へのリフト&シフトを進めています。今ではクラウドに約300台の仮想マシンが稼働しており、DXの取り組みが加速するにつれ、環境構築の作業量が増えることが見込まれています。Terraform Cloudを活用することで環境構築をコード化し、作業時間の高速化や生産性向上を実現しました。
担当者
後藤 晋太郎 氏 デジタル・ICT推進部 インフラ企画・構築担当 出光興産株式会社
後藤氏は、社内向けシステムのインフラ設計・構築のPLを務めています。東田 直也 氏 デジタル・ICT推進部 インフラ企画・構築担当 出光興産株式会社
東田氏は社内向けシステムの構築案件の推進やインフラ設計・構築を進めています。